大統領を作る男たち
アメリカのトランプ元大統領が大統領選に向けた選挙集会の演説中に狙撃される!
「衝撃のニュース」というのはあまりにもステレオタイプで陳腐ですし、あれほど銃があふれているアメリカにおいてはいつでも起こり得ると思っていましたので、「遂に起こったか」というニュースが飛び込んできました。
事件の詳細はまだ明らかになっておらず、「トランプ元大統領は無事」「犯人はSPに射殺された」程度しかわからない時点で書いています。
トランプ元大統領はSPに囲まれて会場を出る際に、右手を突き上げて「無事」を誇示し、自らの英雄伝説をつくるための演出をしっかりと残していきました。
この人物への評価はおくとしても、これはある意味「たいしたもの」です。冷静に見れば「あざとすぎる」という評価もあるでしょうが、「信者」へのアピール度合いは極めて高いでしょう。
初めにお断りしておきますが、本稿はこの事件やアメリカ大統領選について論評するものではありません。
狙撃の瞬間を捉えたニュース映像を見ていて、もう30年以上前に放送されたドラマが非常に印象的だったことを思い出した、という極めて個人的な思い出話です。
そのドラマは、日本では1990年代初頭に放送されたアメリカCBS制作のサスペンスドラマで、放送当時の正確なタイトルは思い出せませんが、「大統領を作る男たち (原題 The Favorite Son)」だったと思います。
3回のミニシリーズで全編で4時間を超える大作でした。
演説中の若手政治家が狙撃されるところからドラマは動き出します。
腹部に銃弾を受けながらそれでも演説を続けたこの若手政治家は、一気に「英雄」「マスメディアの寵児」になっていき、これが間近に控えた大統領選を大きく動かしていきます。
政権側はこの人気政治家を担ぎ出せば必勝間違いなし、と彼を副大統領候補に指名します。
そうした政治の動きの背景で、謎の連続殺人事件が起こります。この捜査を担当するのか主人公の一人である、定年間近のFBI捜査官ニック・マンクーゾ。マンクーゾ捜査官がこの連続殺人事件の謎に挑む、というのがストーリーの縦軸となっていきます。
次々と殺されていく登場人物。この事件の描写もなかなか激しいのですが、事件を追うマンクーゾ捜査官もかなり法を無視した手法も使って謎に迫っていきます。同僚のFBI捜査官が殺された際には「エグイ」かつ「スカッと」復習したりしますが、とにかく真相を知るためには「♪ちっちゃなことは気にしない♪」的に突き進む感じだったと記憶しています。
(このマンクーゾ捜査官をロバート・ロッジアが「渋く」かつ「かっこよく」好演していました)
そしてその度に政治の裏にある辟易するような政治策謀が明らかになっていく一方で、政治の舞台では、副大統領候補になった若手政治家が副大統領に満足せず、「大統領候補にせよ」と要求し始めます。
ところがマンクーゾ捜査官の執念の捜査が、遂に「英雄」が作られた真相を解き明かします。
「英雄」が狙撃された銃弾は殺傷力を最小限に抑えた「死なない銃弾」であったこと、それは「英雄」の側近が知名度を上げるために仕組んだ自作自演の狂言であったこと、そしてそれを隠蔽するために多数の人が殺されたことを。
さすがに記憶が鮮明でない部分も多く、つたない文章では面白さが伝わっていないと思いますが、この作品のインパクトがいかに大きかったかは、その後マンクーゾ捜査官がスピン・アウトして「FBI捜査官マンクーゾ」という連続ドラマが放送されたことでもわかるかと思います。
マスメディアが作り、そして葬る「英雄」。手段を選ばない政治謀略。そして最後の大逆転によってあばかれる絶望的な政治の腐敗。
ストーリー展開もテンポ良く、見始めたらやめられない、という印象がありました。
最後のオチを知っていても十分見応えがあるのではと思います。どこかの配信サイトで見ることができるかもしれません。
一番記憶に残っているシーンはラストシーンです。
高齢の現大統領サム・ベイカーが真相を明らかにした捜査を労うためマンクーゾ捜査官に直接電話をします。
ベイカー大統領は
「なぜそこまで頑張ってくれたのか?」
と聞きます。
マンクーゾ捜査官はこう答えました。
「この国にもう一度だけチャンスをやってもいいかと思って」
ベイカー大統領は半分独り言のように言います。
「危機の時には必ず憂国の志士が現れる。幸せな国だな。」
重ねて書きますが、
「大統領を作る男たち」はフィクションです。実際の国・団体・事件とは一切関係ありません。
エコロ爺さん