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羽生結弦と同じ「におい」がする少女 - 世界卓球2024団体決勝@20240224

(タイトルを含め、以下選手名の敬称略をご容赦ください。また以下、筆者の勝手な想像です)

万里の長城には登った。塀上の戦いで敗れ、長城を超えることはできなかった。」

世界の卓球界がザワついたであろう2024年2月24日。
世界卓球2024団体の女子決勝、日本の女子団体チームは中国に2ー3で敗れて準優勝でした。王者中国にあと一歩及ばず、悲願の中国越えはなりませんでしたが、素晴らしい激闘で日本中を沸かせました。筆者もその生中継に見入っていたひとりです。

日本の女子団体チームは、ついこの間までその背中はまだまだ遠いと思われた中国との距離を一気に詰め、遂にその後襟をつかんだと言ってもよさそうです。
優勝したにもかかわらず、試合後の記者会見で敗戦後かと思われるほど笑顔が見られなかった中国チームに対して、日本チームは「中国を射程にとらえた」という充実感をにじませていたと思います。ただ1人を除いては。

それは張本美和という15歳の少女でした。第5試合で敗れた後に彼女が見せた涙こそが、この大会のハイライトだと感じたのは、私だけではないのではないでしょうか。

日本卓球協会の逆算戦略?

シングルス5戦で先に3勝した方が勝利の団体戦。決勝の両チームのオーダーは次のようなものでした。

第1試合 張本美和 ー 孫穎莎 (世界ランキング1位)
第2試合 早田ひな ー 陳夢 (世界ランキング3位)
第3試合 平野美宇 ー 王藝迪 (世界ランキング2位)
第4試合 早田ひな ー 孫穎莎 (世界ランキング1位)
第5試合 張本美和 ー 陳夢 (世界ランキング3位)

これを見た時に考えたことは「これは日本卓球協会の逆算戦略か?」でした。
極論すれば、日本卓球協会はこの大会で中国に勝つことを第一目標とはしていない。
パリオリンピックで中国を倒す」というゴールを定め、そこからの逆算でこの大会でやるべきことを判断している、と感じました。
大谷翔平か」とツッコミたくなりますが。

勝ちにいくなら平野美宇を2試合に使うべきでしょう。しかし、そうはしなかった。
張本美和に2試合のチャンスを与えた。しかも第5試合を含む。
これには「経験を積ませる」という表現ではおさまらないものを感じました。
(そういえば伊藤美誠にもそのようなことがあったような)

日本卓球協会は、パリオリンピック代表の3人目に東京五輪ゴールドメダリストの伊藤美誠ではなく、15歳の張本美和を選びました。
日本卓球協会のオリンピック本番に向けての最大のミッションは「それまでに張本美和をいかに化けさせるか」ということです。
何と、世界選手権という場をそのミッション完遂のための「プロセス」と位置付けたのか、と驚いた次第です。

もちろんそんなに単純なものではないでしょうが、私は英断だと思いました。

おそらくですが、このオーダーなら第5試合までいく可能性が十分にある、と判断したのでしょう。

「前提」は「孫穎莎には誰も勝てない」「早田と平野は陳夢と王藝迪には勝てる」「張本美和はわからない」

張本美和を第2試合、第4試合にあてるオーダーもあり得たわけですが、その場合、前提からすれば、第1試合をエースで落とし、「わからない」張本美和が敗れれば0ー2。これは望ましくない。
今大会のミッションのためには、このオーダーしかなかったのです。

その結果

第1試合 張本美和× 0 ー 3 ◯孫穎莎 (世界ランキング1位)
第2試合 早田ひな◯ 3 ー 1 ×陳夢 (世界ランキング3位)
第3試合 平野美宇◯ 3 ー 0 ×王藝迪 (世界ランキング2位)
第4試合 早田ひな× 0 ー 3 ◯孫穎莎 (世界ランキング1位)
第5試合 張本美和 ー 陳夢 (世界ランキング3位)

その思惑通り(?)2ー2から最後の第5試合にすべてが委ねられ、15歳の少女がその大役を担いました。
このとてつもないであろうプレッシャーも経験させる。15歳の少女には酷な話だったと私も思います。が・・・

羽生結弦と同じ「におい」がする少女の試練と美勇姿

15歳の少女はこの試練にきっちりと向き合いました。

その日早田ひなに敗れたとはいえ、ここ4年間日本選手に敗れたことがなかった陳夢から第1ゲームを先取。
1ゲームとったこともすごいのですが、それより「ラリーに持ち込めば勝てる」ことが明らかになった、ということがすごい。もはや究極とも思われた中国トップ選手のラリー力を明らかに上回っていました。(陳夢は早田に敗れて多少動揺していた、という点は差し引く必要がありますが)

第2ゲーム〜第4ゲームを失って敗れましたが、その差は「経験」と「引き出しの数」といえるでしょう。第2ゲーム以降、陳夢は「ラリーはさせない」という戦術を駆使していたように、私には見えました。

そして敗れた後に日本チームでただ1人見せた「悔し涙」です。

張本美和は、インタビューを見ていても、「本当に15歳か?」と思わせる顔を頻繁に見せます。
それがどうも記憶にひっかかるものがあり、記憶をたどってみたのですが、これらしい、というものがありました。
それは、シニアの国際大会にデビューした15歳の時の羽生結弦でした。

競技も違えば、性別も違い、キャラクターも違いますが、当時の羽生結弦はインタビューなどの受け答えに「年齢詐称してないか?」と思わせるものがあったと記憶しています。

それは単に「大人びている」とか「淀みなく答えている」というのではなく、その時の自分を理解し、何をすべきかを理解してするべき努力をし、つくべき実力を身につけ、そしてその実力をまた理解している、というような印象を持ったものです。(もちろん私の勝手な印象です)

どうやら私は張本美和に、羽生結弦と同じ「におい」を感じているようです。

羽生結弦はシニアデビューの翌シーズンには世界選手権で3位、さらにその2シーズン後にオリンピックのゴールドメダリストになりました。

協会の思惑通り「ものすごい」を経験をした張本美和が、パリオリンピックまでにどこまで化けるのか?
このアナロジーには大きな「時差」があるかもしれない、と期待しています。

代表 松下正寿

 

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